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介護職で腰痛になった場合の労災について

  • 文責:弁護士 鳥光翼
  • 最終更新日:2022年11月9日

1 はじめに

介護職の方の場合、入浴、移動などの介護の際に被介護者(介護を受ける方)の体を支える場面がありますが、この場合、腰部に被介護者の体重による負担がかかります。

また、おむつ交換などのように、重量はかからないものの、中腰での姿勢が腰部に負担をかける場合もあります。

介護職の方は、事務職の方に比べ、腰痛になりやすい環境にあるといえます。

2 業務遂行性と業務起因性について

労災保険による支払の対象(補償の対象)となる災害は、職種や業務の内容いかんにかかわらず、業務遂行性(事業主の指揮命令の下で労働を提供している過程で発生した災害であること)と、業務起因性(災害の原因が業務であること)を満たす必要があります。

このため、業務外で発生した腰痛(例:休日のレクリエーションでの事故により発生した腰痛)は、労災補償の対象とはなりません。

3 腰痛が業務上のものとして認定されるための要件

腰痛は、業務以外の他の原因(日常生活での動作、業務とは無関係の疾病・持病など)でも起こりうるものです。

このため、労災補償の対象となる腰痛として、次の2つの類型の腰痛が定められています。

⑴ 災害性の原因による腰痛(突発的な力が加わったことによる腰痛)

負傷などによる腰痛で、次の①、②の要件をいずれも満たすもの。

① 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたものと明らかに認められること。

② 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたものと医学的に認められること

具体例として、以下のものがあります。

【具体例1】

重量物の運搬作業中に転倒した場合や、重量物を2人で担いで運搬する最中に、そのうちの1人が滑って荷物を落とした場合のように、突然の出来事により急激な強い力が腰にかかったことにより生じた腰痛。

上記に類する介護作業の例としては、被介護者を介護者2人で別のベッドに移そうとした際、片方の介護者が姿勢を崩したことにより、もう片方の介護者の腰部に急激な負担が生じた場合などが考えられます。

【具体例2】

持ち上げる重量物が予想に反して重かったり、逆に軽かったりする場合や、不自然な姿勢で重量物を持ち上げた場合のように、突発的で急激な強い力が腰に異常に作用したことにより生じた腰痛。

介護作業の例としては、被介護者をベッドから車椅子に移乗させる際、介護者の姿勢が不適切であったことにより、腰部に急激な力が加わったこと場合などが考えられます。

⑵ 災害性の原因によらない腰痛(腰部への負担の蓄積による腰痛)

日々の業務による腰部への負担が徐々に作用して発症した腰痛をいい、その発症原因により、次の①と②に区分して判断されます。

① 筋肉等の疲労を原因とした腰痛

次のような業務に比較的短期間(約3か月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

ア 約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品をくり返し中腰の姿勢で取り扱う業務。(港湾荷役など)

イ 毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務(電柱の上での配線工事など)

ウ 長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務(長距離トラックの運転業務など)

エ 腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務(パワーショベルなどの建設用機械の運転業務など)

② 骨の変化を原因とした腰痛

次のような重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症した腰痛。

ただし、業務とは無関係の加齢による骨の変化によって発症する腰痛も多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるためには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに越える場合」に限られています。

ア 約30㎏以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務。

イ 約20㎏以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務。

介護作業との関係では、被介護者の身体の重量による負担を受けるような作業(ベッドから車椅子への移乗、入浴介助など)を継続して行うことが考えられますが、上記⑶①に挙げられている例のような、長時間くり返し同じ作業を行うということは少ないのではと考えられます。

このため、介護による腰痛が労災として認定される場合は、災害性の原因による腰痛(突発的な力が加わったことによる腰痛)が主になるのではないかと考えられます。

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